「両親の夢を叶えるため…って勢いで始めたとこもあるんだけどね、この店。
これからはもちろんその時の気持ちも忘れないけど、もっと自分のためにやろうと思って。
俺、本当は料理作る方が好きなの。
酒を作るより。
だからbarにしては多すぎるくらいの料理を提供してたんだけどやっぱり注文少ないんだよね。
あくまでもbarはお酒飲むとこだから。
だから千波が美味しい料理出せるんだから昼もやればいいのに…って言ってくれたこと本当は嬉しかった。
もう少し自分がやりたいように業態を変えてもいいのかなって思えたんだよね。
その考えを最後にだめ押ししてくれたのは、実はかっきーなんだけど」
最後だけクスリと笑って、自分にも言い聞かせるように話ながらシンタくんは私の手をとって次の場所へと導いていく。
「きっかけをくれたのが千波で本当に良かった。
俺が一番認めてほしいと思ってる人だからね。
だから背中を押してくれた千波と自分のためにこれからはこの店を本気でやっていくって決めた」
シンタくんが立ち止まり、私に向かってフワリと笑う。
ここに来てから何度目だろう?
この笑顔眩しすぎて泣きたくなる。
だけど我慢して大きく頷いた。

