「ね、そんな話よりさ、もう一度この絵を見てよ」
シンタくんに言われて黄緑色のキャンバスに目を戻す。
「何で子豚のシルエットが描かれてるか分かる?」
「それはこの店の名前が3匹のこぶたに由来してるからでしょ?」
そう答えながら、シンタくんは柿本さんにその話をしたんだな、と思いが至る。
あんまり他人に自分のことを話そうとしないシンタくんがちゃんと心を許したってことだ。
そのことが嬉しく感じた。
「そうなんだけどさ。
千波、ちゃんと子豚を数えてよ」
「はい? だって3匹……じゃないんだね」
よく見たら子豚は全部で4匹だった。
2枚とも4匹の子豚が1列に並んで歩いている。
後ろの2匹はその距離が近くて寄り添ってるみたいだけど。
「……あれ? 一番後ろの子だけ女の子なの?」
もっとよくよく見たら一番後ろの子豚だけ尻尾に可愛らしいピンクのリボンがついていた。
「やっと気付いてくれた?
それ、千波なんだって」
「へっ?」
シンタくんの言葉にびっくりして、私は小さなリボンをつけた子豚のシルエットをまじまじと眺めてしまった。

