ガタン……ゴトン……ガタン……ゴトン……
ドキドキドキドキドキドキドキドキドキ……
電車の走行音の10倍速くらいで鼓動を刻む私の心臓。
「シンタくん……。
私……動悸、息切れ、目眩が……」
小さい声ながら大真面目に訴えたのに、私の頭上に降ってきたのは微かな笑い声と余裕たっぷりの声音。
「若いのに随分不健康なんだね、千波って」
「いやいやいや……」
恨めしい思いで視線をあげたら、シンタくんは真っ直ぐ立って車窓に流れる景色を眺めているだけだった。
右手で吊革を掴み、左手では私の肩を抱き寄せたまま。
私は電車の振動に何度もよろけそうになり、観念してカーキ色のダウンを掴んでシンタくんにしがみつく。
更にフィーバーする心拍音。
緊張しすぎて胸が苦しい。
『シンタくんは空気清浄機みたい』
そう思っていたはずなのに今だけは新鮮な空気が足りない。
ヤバい……幸せすぎてクラクラする。
今日は会えないと思っていたシンタくんが私のすぐ横にいる。
これから明日までずっと一緒にいたいと兄に宣言して、堂々と連れ去ってくれた。
これって夢じゃないんだよね?
「羨ましい…」
急にボソッと呟く声が耳に飛び込んできて正面に視線をやったら、私の目の前に座っている同い年くらいの女の子が私たちを凝視していた。
私と目が合って顔を赤くして慌てて俯く。
その女の子は1人だった。
ちょっと誇らしいけど、
ものすごく恥ずかしくて、
私も顔を赤くしながらシンタくんに寄り添った。

