ミントグリーン~糖度0の初恋~









「たまには飯でも奢ってやろうか?」



私が作り上げた資料の束を先輩が、
先輩が格闘していたノートパソコンを私が抱えて、2人並んで廊下を歩く。



「たまには…って初めてですよ?
そんなこと言ってもらうの。

……もしかして、慰めてくれようとしてます?」



「今さら気付くのか、お前は」



呆れたような渡辺先輩の声に吹き出してしまった。




普段から口は悪いし、しょっちゅう毒を吐くけれど渡辺先輩はとてもいい人だと思う。



初対面の時、強引に授業を見学したいと言った私に目を丸くしていたけど、すぐに教務主任のところへ私を引っ張っていって許可をもらい、私を教室まで連れていって授業を見せてくれた。



先輩の授業はその見た目からは想像できないくらい繊細で、丁寧で、とても分かりやすかった。



不思議なのは話している口調は穏やかなのにものすごく『熱』を感じること。
先輩の授業からは生徒を引き付ける圧倒的な力を感じた。



教室の一番後ろの席で私はその熱意溢れる授業に完全に引き込まれて、その日のうちにここでバイトをすることを決めた。



先輩みたいな授業ができる教師になりたい。
お世辞でもなく真面目に言った私を先輩はよく面倒をみてくれるようになった。



今日みたいに資料作りに関わらせてくれるのも実はとても勉強になるのだ。