「何で知ってるの?
俺がこれを欲しがってたこと」
ちょっと興奮したようにカイチくんが私に訊ねる。
紙袋の中身は、今流行りのスポーツブランドのジャージだった。
「竹田くんに聞いちゃった。
カイチくんがこのブランド大好きだって教えてくれた」
「そっか。 すげー嬉しい、ありがとう。
でも、どうして?」
本当に不思議そうに首を傾げるカイチくんに、ハーブティーを口に運んで一呼吸おいて、私はゆっくりと言葉を選びながら口を開く。
「ちゃんとお礼をしたかったの。カイチくんに。
私が一番落ち込んでた夏に会いに来てくれてありがとう。
私ね、あの後何回もあの湖に走りに行ったの。
あそこで走ると頭の中が空っぽになって自分をリセット出来るんだ。
あの日カイチくんがあの場所を教えてくれて、私の背中を押してくれたから私はちゃんと頑張れたんだよ。
本当にありがとう。感謝してます」
深く頭を下げた私にカイチくんは顔を赤くしていたけど、優しく笑ってくれた。
「俺もありがとう。
そう言ってもらえて本当に嬉しい。
うん……何か報われた」
そして、私たちはお互い顔を見合わせて「へへへ」と照れ笑いを浮かべながら同じような仕草で頭を掻いた。

