「あの……ごめんね?」



私の声に足の上に立てたトレイを弄んでいたカイチくんがその手を止めて私に顔を向ける。



「何で謝るの?」


「いや、雑な扱いしちゃったから?」



カイチくんがフッと息を洩らし、右手を口にあてて笑う。



「いーよ、別に。
本当はどんな形でもチョコレート貰えて嬉しいもん。
日吉が1人で作ってくれたならもっと嬉しいけど」



「うぅ……」



もしかしたら気付いてるのだろうか?
作業の8割までを雪がやってくれたことを。




「あのさ、これ」


気を取り直して、傍らに置いていた紙袋をカイチくんにずずっと差し出した。




「え? 何?」



トレイを足の上に置いて空いた手で袋を受け取ったカイチくんが、私と手にしたものを交互に見やる。



「バレンタインのプレゼント。


……これは、私1人から」



「マジで?! 」と1度だけ大きな声を出したカイチくんは、すぐにガサゴソと紙袋を開けて中身を確認した途端に顔をパァっと明るくさせた。