『今日は何かいいことでもあったの?』
シンタくんは、ほんの少し言葉のやり取りをしただけで私の機嫌を見極めてしまう。
そういうところからもシンタくんの優しさに触れることができて、私の胸はキュッとなる。
今までさりげない優しさに気付かないことがあったかもしれない。
これからはちゃんと全部気付けるようになりたいなと思う。
「別にいつもと変わらないよ?
ただ、明日からやっと春休みだから嬉しいなって思ってるだけ」
『ふーん?』
納得はしていないみたいだけど、シンタくんは電話の向こうでクスリと笑った。
最近はメールより電話をくれることが多くなった。
話す内容は相変わらずの近況報告ばかりだけど、やはり声が聞けるだけで気持ちの盛り上がりは全然違う。
シンタくんはその事をちゃんと分かっていて電話の回数を増やしてくれたに違いない。
それでも物足りないと思っていたなんて私は本当に欲張りだ。
香折さんに弱音を吐いてしまったが、初恋が成就してからの私はどんどん欲しがりになっている。
でも、香折さんが教えてくれた。
恋の始まりは、相手をどんどん求めたくなるのが当たり前なのよ…と。
本当にその通りだと心から思う。

