あの時は、本当に夢中でシンタくんにすがってしまった。
シンタくんは自分のことだけで目一杯だったはずなのに、私の無茶な要求を躊躇うことなく受け止めてくれた。
シンタくんは、私のために……?
「シンくんは日吉くんをお母さんみたいにしたくなかったんだろうし、日吉くんの彼女さんが悩んでいることを分かっていても話を聞いてあげられなかったって責任を感じてたわ。
千波ちゃんが言わなくてもシンくんは日吉くんを放ってはおけなかったでしょうね。
でも、シンくんの心の真ん中に常にいたのは千波ちゃんだよ?」
香折さんはそう言って、俯いて涙を流し続ける私の頭をポンポンと撫でてくれた。
私は鼻を啜りながら何度も頷く。
想いが通じ合う前からずっと私はシンタくんに守られていたんだ。

