春ちゃんがいなくなってしまった時、猛烈な悲しみと共に私に襲いかかったのは恐怖だった。
呻きながら涙を流し座り込んだままの姿勢で床を殴り続けていた清海兄ちゃん。
そのまま床を突き破ってどこまでも堕ちてしまうのではないかと思った。
清海兄ちゃんまでいなくなっちゃったらどうしよう。
想像するだけで目眩がした。
そんなことになったら私だって生きていけない。
「シンタくーん!!!」
斎場で見つけたその後ろ姿に全力で叫んだ。
すぐ横に綺麗なお姉さんがいることに気付いていたけど、私は必死だった。
「カオリさん、ちょっと待ってて」
そう言ってすぐに私に歩み寄ってくれたシンタくんに手を伸ばして、その腕にしがみついた。
「お願い! お兄ちゃんを助けて。
私から清海兄ちゃんまで取り上げないで!
お願い! お願いぃ!!」
無我夢中で泣き叫んでいた。
そんな私にシンタくんは驚いていたけど、すぐにキッパリと言ってくれた。
……大丈夫。
……約束する。
そして、本当にシンタくんは、約束を守ってくれた。

