「でもね?」
香折さんが私に微笑みかけて、はっきり断言するように言った。
「一般的な恋人同士って括りの中なら無味乾燥にみえる交際だったかもしれないけど、私にとっては特別に甘い時間だった。
一番好きな人と一番好きなものについて語るなんて特別贅沢でとびきり甘い時間だった…って胸張って言えるわ」
『私にとっては特別に甘い時間だった』
香折さんの言葉が胸に刺さった。
雪に『付き合い始めてもあまり甘くないんだね』って言われてちょっと傷ついていたけど、甘いか甘くないかの判断は当事者の私にしか決められない。
他愛ない近況報告のみでも毎日届くシンタくんのメールは私をドキドキさせてくれた。
返信メールを打ちながら胸に広がる温かさはほのかな甘さを含んでいた。
シンタくんと想いを伝え合ってから、私の初恋は少しずつだけど糖度を増しているんだ。
そう思えたら、心が軽くなるのが分かった。

