「はい、どーぞ」
白いマグカップが私の前に置かれた。
「砂糖とミルクは?」
「両方欲しいです」
私の答えを予想していたかのようにすぐに差し出されたスティックシュガーとコーヒーフレッシュ。
香折さんはブラックのままゆったりとした動作でカップを口に運んだ。
「シンくんもいつもその席に座って砂糖もミルクもたっぷり入れたコーヒーを飲んでたわ。
一応ここは院生の研究室なのに2年生になったばかりの彼がしれっと違和感なくそこにいるの。
そういえば誰も注意しなかったわね。
今思えば大したもんだわ」
懐かしそうにクスクス笑いながら香折さんが話してくれた。
「それは、香折さんと付き合っていたからでしょう?」
「私がいてもいなくてもよ。
シンくんは歳も性別も関係なく誰とでもニュートラルに接するの。
それは今の仕事にも役立つ彼の特技なのよ」
言われてみれば。
私は納得して大きく頷いた。

