「それで、シンくんと千波ちゃんはうまくいったんだよね?」
さりげなく問いかけられたので、そのまま素直にコクンと頷いてしまった。
「良かった…」
本当に安心したように大きく息をつく香折さんに私も小さく頷いてみせる。
シンタくんがお母さんのことを話してくれた時、香折さんと別れてしまった理由も教えてくれた。
何も話せず、自分の中に全てを抱え込んでしまったシンタくんの気持ちも分かる。
でも、私はやっぱり香折さんの立場で考えてしまう。
好きな人が本当に辛い時、支えになりたいのにその理由を何も話してもらえなかったら。
それも本当に本当に辛いことだったんだよな…と。
そんな辛い別れ方をしたのに、もう一度シンタくんと話したいと思えた香折さんを私はとても大人だなと思った。
だから、2人がもう一度話せるきっかけに自分が関われたことを今は良かったと思っている。
香折さんに頼まれた当時は、ほんの一瞬、伝言しないままバックレてしまおうかと思ったけど。

