藤村教授の教育学は一般教養の中でも『安全パイ』と呼ばれる人気講義だ。
授業内容は海外で有名な教育学博士の【子育て論】を1年通して解説していくというもの。
そして、テストは後期のみ。
1年を通して学んだ講義について自分なりの考察と感想を述べるという簡単なものだ。
出席にはうるさいが後期のみのレポート提出で単位がとれるということで教育学部以外でも履修する学生が多い。
そのレポートだって授業の感想として
【教職を目指すにあたって非常に役立つ内容だった】
【自分が親になった時に参考にしたい】
なんていう当たり障りのない内容でも単位がとれてしまうというのだから人気が高いのは当たり前だ。
大学にはたまにこんな美味しい講義が存在するものらしい。
私の周りの友人たちも当たり障りのないレポートをやっつけで書き上げて提出していたし、私だってそうして他のテスト勉強に時間を割いてきた。
でも、そんな風におざなりで提出してしまったレポートのことはずっと私の中で引っ掛かっていて、
結局どうしても納得できなかったから昨日の午前中に最後のテストが終わってから今朝まで集中して書き直した。
自分なりの解釈と考察をたくさん書き加えたレポートを教授は笑いながら受け取ってくれた。
「提出期限を過ぎてるからその分はマイナス評価だよ」
教授にそう言われても、私は清々しさでいっぱいだった。
香折さんも同じようにしていたなんて。

