『今日はホントにごめんな。
あれから真っ直ぐ帰ったの?』
「ううん。駅のコーヒーショップでかっきーさんにコーヒーとサンドイッチごちそうになった」
『へぇ……』
「かっきーさんってメチャクチャ好い人だね。
私の話いっぱい聞いてもらっちゃった」
『へぇ……。どんな?』
「大したことじゃないよ。
大学のテストのこととか、バイトのこととか?」
ちょっとウソをついた。
『ふーん。 で、かっきーは何か言ってた?』
「何かって?」
『まぁ…………俺のこと、とか?』
ちょっと探るような訊き方。
シンタくんらしくない。
「シンタくんのことなんて何も言ってなかったよ。
仕事の話とか聞かせてもらって、デザイン画も見せてもらった。
川越のイタリアンレストランのやつ」
これは、本当の話。
シンタくんはもう一度「へぇ」とだけ言って黙ってしまった。

