「ってか、千波ちゃんに何も話してないんだね……。マスター」
柿本さんは傍らのスケッチブックを手に取ってパラパラとめくりながら
「ったく、マスターは秘密主義というか、独りよがりというか……」
小さくため息をついて私に目を向けた。
「やっぱ、改装するんだよね? あのお店」
「いや、改装というかさ……」
一番最後らしいページを私に向けようとした柿本さんがふと、手を止める。
てっきり見せてもらえると思って身を乗り出した私の目の前でパタンと閉じられるスケッチブック。
「ごめん! やっぱりここは我慢して、千波ちゃん」
「え? え? えー?!」
思いがけない寸止めにその場でずずーっとコケそうになった。
そのまま両手をテーブルについてじとーっと恨めしげな表情の私の前で柿本さんが手を合わせる。
「やっぱこれだけはさ、本人から聞いた方がいいよ。
別に隠すほどのことじゃないと思うけど、マスターは自分で伝えるのを楽しみにしてるかもしれない」
「……」
尚も上目使いの私に苦笑いしながら柿本さんは続ける。

