「メールして、その返事が『忙しいからダメ』とかじゃイヤだったからわざと返信確認しなかったの。
だけど、シンタくんは『ダメ』じゃなくて、かっきーさんが来る前に美味しいお茶しようって待っててくれたみたいで……」
「あー……」
柿本さんがテーブルの隅に並べて置かれた紙袋に目をやる。
「なるほどね。
そりゃ、千波ちゃんが落ち込むわけだ」
納得したというように何度も頷く柿本さんの前で私はガックリと項垂れた。
「でもさ……」
コーヒーを静かに口にしながら柿本さんが私に訊ねる。
「何でそんな強行手段に出たの?
メールの返信確認しないとか、いくらよくない返事がイヤだったとはいえさ。
そんなの千波ちゃんらしくないよね?」
「それは……。もう私らしいとか、らしくないとかはよく分からないんだけどね」
そっと俯いていた視線を上げると、そこには陽だまりみたいに暖かそうな柿本さんの笑顔があって、
私はその暖かさに励まされて自然に話始めていた。
シンタくんと付き合うことになってから今日までの私の心の中全部を。

