「本当だ…」
分厚い辞書みたいな本が並ぶ棚。
小さめの本とオモチャの木の車が一緒に飾られてる棚。
綺麗な花を生けた花瓶だけが飾られてる棚。
似たようなレイアウトの棚はあるけど、微妙に本の順番が入れ替わったりしていて柿本さんの言う通りひとつとして同じ棚はなかった。
「すごい」
「気付く人なんて殆どいないのにこーゆーところに手を抜けない。
それがデザイナーのエゴってやつ。
はい。これでよかったかな?」
素直に感心する私の前に白い泡で覆われたマグカップが静かに置かれる。
「ありがとうございます」
頭を下げる私の前に座りながら、柿本さんは小さな苦笑いを浮かべて首を傾げた。
「ねえ、どうして今日はそんなに堅苦しい敬語なの?
俺さ今いる業界が体育会系並みに上下関係に厳しいからヤローには言葉遣いうるさく言うんだけどね。
…っていっても俺の下なんてほんの少ししかいないんだけど。
千波ちゃんみたいな可愛い女の子に敬語使われちゃうと何か照れるよ。
出来ればこの間みたいにフランクに話してほしいな?」
その言葉にクスリと笑ってしまう。
肩の力がすーっと抜けて楽になる。
「分かった。 ありがとう、かっきーさん」
にっこり笑ってカップを手に取ると、柿本さんも嬉しそうに笑い返してくれた。

