「これってマドレーヌ?
マスターって何でも作っちゃうんだねー」
突き抜けるように明るい柿本さんの一歩後ろをとぼとぼと歩く。
付き合い始めてから初の奇襲攻撃は散々な結果に終わってしまった。
その結果は私の浅はかさが生んでしまったもので、シンタくんに申し訳ないことをしてしまった。
その事に激しく落ち込んでしまう。
「残念だったね?」
駅前のロータリーに向かう交差点の信号待ちで柿本さんは私の顔を覗き込むようにして言った。
どどーん、と落ち込んでいる私に寄り添おうとしてくれるような仕草に胸がギュッとなる。
弱りきっている私に柿本さんの笑顔は少し痛い。
「良かったら、ちょっとお茶していかない?」
それでもそう言ってくれた柿本さんに向かって私は素直に頷いていた。
「よし。じゃ、そこに入ろうか?」
駅のコンコースにあるコーヒーチェーン店を指差して歩き出す柿本さんの後ろを私は黙ってついていった。

