「悪いな。 かっきー」
シンタくんが柿本さんに軽く手をあげる。
「ご、ごめんなさい!」
私も急いで頭を下げる。
「全然いいよ。 じゃ、マスターまた来週来ますね」
柿本さんが荷物を取り上げて、ふと私を振り返る。
「千波ちゃん。 その頭マジで可愛いよ。
マスターも照れてるのかな?
すこーし目が泳いでやんの。マスターもカワイイよね?」
「かっきーぃ?」
へ? と私がシンタくんを見やるのと、シンタくんが柿本さんに詰め寄るのが同時だった。
「ハハハー。
何かすごくイイモノ見せてもらっちゃった」
柿本さんがおどけながら店のドアを開けたら、ちょうどこの店に上がってくるらしい賑やかな足音が聞こえてきて、
「わわわ……」
柿本さんがビックリしながら脇に避けた。
何事かと目を丸くする私とシンタくんの前に現れたのは…。
「シンタくーん、ちょっと早いけど大丈夫?」
私が入学式の後ここに来た時、少しお話しさせてもらったこの店の常連さん。
佐藤さんと鈴木さん。
それに続いて5人の盛装をした女の人たちだった。

