「じゃ、そーゆーことで」
シンタくんが区切りらしい一言を発して伸びをしているのが見える。
私はスマホを手にボーッとしたままだった。
「悪いね。いざやるとなるとあれこれ拘りたくなっちゃって」
「望むところですよ。
これで出来る限りやってみますね」
柿本さんがパタンとスケッチブックを閉じて、シンタくんがこちらに歩いてきてくれる。
「ん? どした?」
俯いた私の頭に優しく置かれる手。
そろそろと視線をあげるとシンタくんは穏やかに微笑んでいて、
私がここに来た時の不機嫌さはすっかり消え失せていた。
「あ、あの……」
謝らなくちゃ。
大事な返信メッセージ見なかったこと。
でも、うまく言葉が出てこなくって、オロオロしてしまう。
「あのー、お話ちょっと待ってくれる?
俺帰りますから。
そうしたらお二人でゆっくり話してね」
柿本さんがにこにこ笑いながらスツールから立ち上がった。

