「はいはい。
つまりまだ納得できていないってことですね」
柿本さんが苦笑いしながら目の前に広げられていたものを取り上げる。
それはノートではなく、小さめのスケッチブックだった。
そっか。柿本さんはデザイナーさんだもんね。
持ち物と持ち主の情報が一致して納得はしたけど、シンタくんは柿本さんにスケッチブックを持たせて何をしているのだろう?
…………もしかして、このお店を改装するとか?
一番あり得そうな答えだけれど、
私はそんなこと聞いていなかった。
というより、シンタくんは仕事で出会った人のことや新作メニューのことなど当たり障りのないことは教えてくれるけど、それ以上のことは話してくれない。
接客業はストレス貯まることも多いと思うけど、グチ1つ言わないし。
私が子供だから仕方がないのかな?
告白の時話してくれたお母さんのことだって、シンタくんは私に嫌われたくなかったって言ってたけど、私がもっと年が近くてシンタくんと同じくらい大人だったら相談とかしてもらえたのかな?

