ミントグリーン~糖度0の初恋~



そのことに気付くのにここまで時間がかかったのは、私がそれでも十分に満足できていたからだ。



今までは用事がある時しか出来なかったメールが毎日できる。



ほんの些細な日常の報告だけでも毎日繋がっていることが嬉しかった。






それにシンタくんは以前自分でも言っていたけど、本当に本当に忙しいのだ。



お店を1人で切り盛りしてるからそれだけでも大変なのに、お父さんが遺してくれたアパートを二棟、管理会社などを介さずに1人で管理している。


そして、月に2回は千葉のお母さんのところへも通っている。



時間があればあるだけ頑張ってしまう。


シンタくんはそういう人だった。





1度だけのラーメン屋デートはお店の仕込みがあるから、と大した時間を共有できなかった。



クリスマスプレゼントにまたまた深緑色の毛糸の手袋をもらってご機嫌だったし、ワガママでシンタくんを困らせるのだけは嫌だったから私は素直にシンタくんの都合にあわせた。



学生の私だってそれなりに忙しい。
受験本番を目前に控えた予備校のバイトは週4回入ってるし、自分の後期テストの準備も始めなくてはいけなかった。



全く立場も環境も違うところで過ごす私たちは、すれ違うことが当たり前でそれを受け入れるしかないんだと思って自分を納得させた。




だけど、この状況を冷静に見れるようになった今。



確かに生まれてしまった小さな不満と寂しさ。



でも、私はシンタくんに『会いたい』ということすら遠慮するようになってしまっていた。