「クリスマス前に1度ラーメンを食べに連れてってもらった。
その時に当日はお互い忙しくて会えないから、ってプレゼント交換して…」
「…………ラーメン。
しかもクリスマスも会ってない……?」
呆然とする雪を正視できなくて、私はモゾモゾと動かす必要のないネギや椎茸を並べかえる。
「あんたさ、正月に皆で会った時、私は宇宙一幸せだ、とか言ってはしゃいでたよね」
「……ええ」
「あの時は渉たちだけじゃなくて他にもメンバーいたからゆっくり話せなかったけど、千波の様子見てあぁやっとこの子も人並みの恋愛始めたんだ…とばっかり思ってたのよ?」
「何よ。人並みじゃないとでも言いたいの?」
「あったり前でしょ!」
雪は包丁を持ったまま私に詰め寄る。
「危ないって」
小さなため息とともに包丁を取り上げて、私がまな板の前に立った。
「幸せボケってあるでしょ?
やっと想いが届いたからさ、それで満足しちゃってて。
一応LINEは毎日やってるし。
あれ? そういえば会ってないなぁ…って気付いたのが年明けてこっちに帰ってきてから」
「それって幸せボケというより、単なるおバカさんだよ…。
恋愛初期ってさ、直接会う時間たくさんとってなんぼでしょ?
LINEじゃ進展望めないと思うのは私だけ?」
大きな大きなため息をつく雪の横で、私は慣れない手つきで白菜に包丁をいれた。

