「それよりさ、すごく似合ってる」
私の頭を指差してから、カイチくんはティーポットを持ち上げて私のカップにおかわりを注いでくれた。
「ありがと」
さすがに照れ臭くて俯きながら紅茶を口に含む。
「そのくらいの長さだったよね?陸上やってた頃。
雰囲気は全然違うけど」
「あー、そうだね。
辞めてからずっと伸ばしてたからあの頃以来だ。
こんなに短いの」
あの頃と違うのは、真っ直ぐでおかっぱだった髪にゆるくパーマがかかってふわふわと踊っていること。
初めてのパーマはちょっと大人になった気分だった。
「そっちの方が断然いいよ。
彼氏さんもきっと惚れ直すって。
俺も惚れ直しちゃった。
……なんてね」
茶目っ気たっぷりに舌を出すカイチくんには敵わなくて、私は苦笑いするしかない。
「悪い! カイチ下りてこれるかー?」
階下から透さんの声が響いた。
「はーい! すぐ行きまーす。
じゃ日吉、後30分くらいで終わるから待っててくれる?」
「うん。お仕事頑張って」
手を振る私に微笑みかけてカイチくんは階段を駆け下りていった。
私たちはこの後八王子の雪のアパートに行って、竹田くんも含めた4人で新年会をやることになっている。
私は1人になって薔薇の紅茶をゆっくり味わった。
そして、まだまだ慣れないパーマヘアに手をやりながらふと思う。
私がこの髪形をシンタくんにお披露目できるのはいつになるんだろう…?

