「シンタくん、ナポリタン全然足りないよ?
皆もっと食べたいって」



絶妙のタイミングで千波が空いた皿を手にやって来る。
俺は目線で柿本さんを牽制しながら



「じゃ、残ってる材料でもう一回作りますかね? 宇宙一ナポリタン」



「やった。私、手伝う!!」



「いや、いい。 ケーキ作り以外千波は戦力外だから。あっちで皆とお喋りしててね。

俺、かっきーに話もあるし」



皿を受け取ってから千波の頭に手を置いて言い聞かせた。



「ちぇーっ。 じゃ、かっきーさんは話が終わったら戻ってきてね?
私、デザインとか興味あるからお仕事の話とか聞かせてほしいんだ」




柿本さんに特別罪作りな笑顔を残して千波はご機嫌そうにテーブルに戻っていった。




「ちぇーっ。あんなに可愛いのになー。

マスター、横取り立候補してもいい?」



「いいわけないでしょ!

まあ、千波がなびくわけもありませんけど」



「ちぇーっ」



柿本さんは千波の方をチラリと振り返ってから



「で、話って何ですか? 彼女に聞かれたくない真面目な話?」



「うん…。聞かれたくないって訳じゃないけど、結構真面目な話。
実はちょっと考えてることがあってさ。

力を貸してほしいんだよね」



「俺に? 非力ですよ?見た目通りに。
それでよろしければ」



目をぱちくりさせる姿に笑いながら



「その力じゃなくて、かっきーにしかない才能を借りたいんだよ」



まだ首を傾げている柿本さんに俺はここ最近ずっと考えていたことを話始める。



テーブル席では、ウメちゃんのウエディングドレスの下見についていきたいと千波が興奮しているのが見えていた。