「マジで恋して5秒で撃沈」



「ぶっ。 それって近いうちに発売の新曲か何か?」



「リアルな俺の心情です」




俺をじとーっと見つめながらナポリタンを食す柿本さん。



「あの子が噂のナポリタンプリンセスだなんて。
めちゃくちゃ可愛いじゃないですか。

俺、一瞬で恋に落ちましたよ?

それなのにマスターの……。

今日はとことん飲み食いさせてもらいますからね!!」



「……はいはい。

飲み食いは好きなだけどーぞ?

そーゆーお店なんで。ここ」





今日はパーティーなので全ての料理は大皿に盛られそれぞれが取り分けるスタイルなのだが、昼食を食べ損なっているという柿本さんをその輪の中に入れておくのは可哀想なのでこうして個別接待中。



柿本さんは不貞腐れた態度と裏腹に1人で大盛りナポリタンをあっという間に平らげていく。



テーブルを囲む残りのメンバーもそれぞれ気に入って食べてくれているようで、大皿の方もあっという間に空になっていた。




「そりゃあ、あんなに可愛い彼女のためなら必死に研究開発しますよね。宇宙一ナポリタン。

たとえケチャップまみれになろうが試食のしすぎで太ろうが」




最後の一口を食べ終えて紙ナプキンで口元を拭う柿本さんに俺は慌てて身を乗り出す。



「それ、あっちで話してないよね?!」



「さあ? 」



しれっと受け流した柿本さんは
「ジンライムください」
と言って、俺にニヤリと笑ってみせた。