「千波っていい名前だよね。
響きも可愛いし、すごく合ってる。キミに」
突然『キミに』なんて言われて心臓が跳ねた。
「そうですか?」
何だか恥ずかしくなって、工藤さんと真っ直ぐ視線を繋げない。
そんな私を気にするでもなく、工藤さんは続ける。
「うん。本当にぴったり。
そちらのご両親ってセンスいいよね。
自分達の大事なものを子供の名前に残すなんてさ。
あいつも自分の名前嫌いじゃないって言ってたよ。
清海(セイカイ)ってカッコいいし、って」
「……自分で言っちゃうんですね、それ。
確かに清海兄ちゃんはいいですけど、もう一人の清雲(セイウン)兄ちゃんは本気で嫌がってましたよ?
お寺の住職かお線香みたいだ、って」
工藤さんが本当に可笑しそうにゲラゲラと笑った。

