兄が言った通り、この湖から私の名前は付けられた。
私の両親は揃ってこの土地の出身。
生まれ育った土地をこよなく愛し、数あるスポットの中でも特にこの千波湖が好きだった。
『付き合ってる頃からよく2人で歩いたのよ。
結婚したら、この近くに家を建てようね…なんて話してね。
これがプロポーズだと思ったら違ってて、富士山に登山した時だったのよー』
それはそれは幸せそうに話してくれた母。
プロポーズの思い出である幻想的な雲海は二人の息子に、
大切なデートスポットは一人娘に。
両親は、自分達の思い出を子供たちの名前に盛り込んでいる。
素敵だと思うけど、あまりにも単純で名前の由来を聞かれる度にちょっと恥ずかしい。
それをあっさり工藤さんに話してしまった兄が恨めしかった。

