「千波ー、とりあえず一服しよーぜ。
あったかいココア淹れてやったから…」
「うん。ありがとー」
俺が全部喋り終える前に明るい声が返ってきたのに、千波はバックヤードから出てこない。
「何やってんの?」
しびれを切らしてバックヤードを覗いたら、奥に置かれたソラマメ色のソファで千波はすっかり寛いでいた。
「ここで飲みたい」
「は? ここって……」
「いいでしょ?
何かここ落ち着くんだもん。
ここでココア飲む。ちょーだい?」
何でそんなことを言い出すのか訳が分からなかったけど、甘えた表情で両手を差し出す千波に敵うわけもなく、
「俺に運ばせるとはいい根性だな」
精一杯の強がりを吐きながら俺はカウンターに戻って2つのマグカップを手にした。
「…熱いぞ?」
念押ししながらカップを差し出してやると千波はそれをそっと受け取って立ち上る湯気に鼻を寄せる。
「いーにおい」
満足げな微笑みを浮かべて何度も息を吹きかけてからカップに口をつけた千波は
「とても美味しいよ」と俺に向かってにっこり笑った。

