「ここってさ、何湖っていうんだっけ?
さっき清海に聞いたんだけど、ド忘れしちゃった」
突然、工藤さんが私の方を向いたので慌てて視線を逸らす。
見つめてたのバレちゃったかな…。
「えっと…ここは、千波湖(センバコ)、です」
「そうだそうだ。そう言ってたわ」
工藤さんは大きく頷いてから、私に向かって微笑んでみせた。
「妹と同じ名前の湖だって言ってたよ、あいつ。
何で忘れちゃったんだろ。
ごめんね?」
「いえ…別に謝って頂かなくても」
軽く頭まで下げる工藤さんにパタパタと手を振ってみせながら、
『余計なこと言わないでよ!』
と心の中で兄に猛抗議する。

