「……何だか、すごい雰囲気のあるお店だね…」
空いている椅子にドサッと荷物を置きながらアンティークで統一された店内を見回す千波の鼻は真っ赤だった。
クリスマスも近い12月。
冬のど真ん中。
外に出て歩いてみたら、思った以上に北風が強くてちょっと後悔した。
それでも大きな紙袋をガサガサいわせながらここまで歩く道のり、千波はとても楽しそうだった。
デートらしくランチだけは済ませていこうと声を掛けただけで千波の機嫌は元通り。
美味しい洋食が食べたいと言うので、大学時代に贔屓にしていた洋食屋に連れてきた。
池袋は、俺や清海、春花が一番よく遊んだ土地だ。
俺たちは3人ともこの駅から乗換で大学に通った。
メイン通りからは外れたところでひっそりと営業しているこの店は、春花が見付けてきて清海と3人でよく通った。
千波にそう教えてやったらより一層興味深そうに店内を見回し、メニューを手にして隅々まで目を通している。
「ずるいなー。
私も一緒に来たかったよ。4人でさ。
何か3人でばかり楽しい思い出があるのってずるくない?
私、オムライスにする」
メニューをパタンと閉じて小さくため息をつく千波に
「そりゃ仕方ないでしょ。千波はその時中学生」
半ば呆れながらそう言うと、俺は水を運んできたマスターにオムライスを二つオーダーした。

