その後も香折さんと色々なことを話して、付き合っていた頃に戻ったような時間を過ごした。
お互いが過ごしてきた時間を報告しあい、香折さんと野口教授の馴れ初めも教えてもらった。
「別に何てことないのよ。
シンくんに完全にフラれちゃった後、落ち込んでた私を慰めてくれたのが彼だったってこと。
参ったわよ。事あるごとに心理学の文献持ってきて、ここに書かれていることが君の心を癒すだろう…って。
本ばかり読まされてさ。
結果的には全てが勉強になって博士課程までとれたし、助手として大学に残れたからいいんだけど、恋愛と仕事の区別がないっていう悩みはこれからも付きまとうわね」
そう言いながらも充実感でいっぱいらしい香折さん。
「良かったじゃない。
香折さん、理想に近い生活手に入れたんじゃない?」
「何それ?」
「ずっと言ってたじゃん。
心理学を仕事にしたいから、それに理解ある人としか付き合わない。
もし結婚しても仕事にどっぷり浸かってたいかも…って。
それくらい心理学が好きなんだっていつも熱く語ってたよね?
野口さんはまさに理想の王子様みたいに聞こえるけど?」
頬を赤らめて俯く香折さんをからかいながら、彼女が自分らしい幸せを手に入れてくれたことを心の中で祝福していた。

