「もう何も怖くなくなったでしょ?」
香折さんの言葉にこくりと頷く。
「さすが香折さんだよね……」
「心理学も何もいらなかったね」
笑顔のままグラスを空ける香折さんに倣って俺もグラスを手にし、よく冷えたハーパーを大きく一口飲み込んだ。
まとまってしまった大きな大きな想いは、もう伝えないと気が済まない。
自分で上げてしまったハードルを越えられなくて尻込みしてたけど、それなら越えるための棒でも何でも探さなくては。
いや、越えられないならハードルをくぐってもいい。
越えることは後から考えてもいい。
まずは、あいつと話さなくては。
今のありのままの自分を見せることももう怖くはなかった。
情けない俺を受け入れてもらえなければ、受け入れてもらえるまで粘ればいい。
あいつの理想をぶち壊してしまったら、名誉挽回すればいい。
簡単なことじゃないか。
急にすとんと腑に落ちる答えを見付けて、
俺は拍子抜けした気分だった。

