「何がよ?」
「何がよ? じゃないわよ。
家族愛が恋愛感情に変わるって…。
それは違うでしょう?
シンくんが千波ちゃんに抱いてたのは始めから恋愛感情だけ、でしょ?」
「ないないない。それはないって」
思いがけない指摘に目を剥き、スツールを左に90度回して香折さんに向き合う。
香折さんも右に回転して俺に対峙する。
「何でそう素直じゃないかなぁ?」
「いやいや、香折さんが先走ってるんだって。
香折さんは知らないだろうけど、あいつには清海以外にも兄貴いたの。
事故で亡くなっちゃったけど。
だから俺はその代わりになってやりたくて……。
俺もずっと妹欲しかったからちょうど良かったし。
家族愛で繋がりたいってずっとやってきたんだから…」
…………俺は何を必死に言い訳してるんだろ?
ぐったりして酒を飲む気にもなれなくなってグラスをカウンターに戻した俺にあっさりと返された言葉は
「それって千波ちゃんのためにずっと頑張ってきたってことじゃない。
千波ちゃんが好きだから」
「…………え?」
「始めからずっと好きで、何があっても千波ちゃんのことだけは手を離さずにずっと繋がってきたっていうことでしょ?
あのさ、今の自分にだけ素直になるんじゃなくて昔の気持ちもちゃんと認めてあげなよ。
そうしたら、どれだけ千波ちゃんが好きなのか分かるでしょ?
今さら怖いなんて情けないこと言ってられないと思うけどな」
俺は呆然としたままそれ以上何も言えなくなった。

