「あーあ、シンくんを泣かせてみたかったのに」
悔しそうに顔をしかめる香折さんに笑ってしまう。
「男の子はそう簡単に泣きません」
かなり危なかったけど、とは心の中でだけ呟きながらピーナッツを口に放り込んだ。
「シンくんは特にそうだよね。
頑固で素直じゃないし。
でも、千波ちゃんなら出来そうかな?」
「あ…ん…?」
ナッツを口に含んだまま止まる。
恐る恐る見やった香折さんは、
「しめた」と言わんばかりにまたあの笑顔を浮かべて首を右に傾げた。
「やっぱり、相当好きなんだねぇ。千波ちゃんのことが。
あの子の話を始めると急に表情豊かになるよ?
ねえ、だったら今度は素直になりなさいよ?
うじうじしてないで本当のシンくんを晒け出さなきゃダメだよ?」
「…………」
無意識に噛み締めたナッツが耳の奥でガリリと音をたてた。

