ルビー色のグラスを目の高さまで上げてゆらゆらと揺らしながら、香折さんは大きく息をついた。
「本当に何も言ってくれないんだから……」
「うん。今話してて、俺って酷いやつだなーって思った」
あっさり同意してグラスの酒を口に含む。
俺たちは話している間、お互いに正面を向いたままだった。
「でも、やっぱり私も気付いてあげなくちゃいけなかったと思う。
それなのに一番辛いお父さんのことばかり引き合いに出してシンくんを責めてばかりで。
本当にごめんなさい!」
先に動いたのは香折さんの方だった。
右に90度スツールを回転させ、俺の方を向くと深々と頭を下げた。
「もうやめようよ。
お互いに謝ってばかりなんてさ、楽しくないし。
それよりも、ありがとう。
会いに来てくれて。こうやって俺に話す機会を与えてくれて良かった」
そう言いながら香折さんの左肩に手を置く。
顔を上げてくれた香折さんは泣き笑いのちょっと情けない表情だった。
「ぶっ…。美人台無し」
吹き出した俺に拳が振り上げられる。
「もう! シンくん酷い。
そうやって人からかう癖全然変わってない」
顔を見合わせて笑う俺たちは昔のままに戻っていた。

