「……っるさいな!
香折さんには分からないんだよ。
こう見えたってキチンと時間かけて考えて決めたんだ!」
思い切り声を張り上げて足下のコップを踏み潰した。
それは、何の抵抗もなくペシャッと潰れてしまう。
俺みたいだ。
欠片ほどの抵抗力もなく、あっさりと沢山のものを無下にして潰れてしまった。
実家を手放し、母を壊して。
母の中の父まで消し去ってしまった。
確かに父は天国で嘆いているだろう。
『一本太い芯の通った男になれ!
そして力強く母さんや大事な人を支えろ!
そう言っただろう? 芯太。』
父の声が聞こえた気がした。
間違いなく父は天国で嘆いている。
俺は涙を堪えた真っ赤な目を見られたくなくて、顔をあげられなかった。
ガタンと椅子を引く音がして、香折さんが俺の前から去っていく。
その背中に声も掛けられなかった。

