「大学を辞める?!」
学生たちで賑わう学食の片隅で、香折さんがあげたのはその場で許されるギリギリボリュームの叫びだった。
「うん。他にやりたいことできちゃったんだよねー」
サラッと返しながら紙コップのコーラを飲み干した。
「親父の遺産にね、テナントビルが一軒あってさ、そこの2階が空いてるの。
そこでbarをやることにした」
「何言ってるの? 分かるように説明してよ」
「だから説明してるじゃない。
学生辞めて、barのマスター目指します」
「…………本気なんだ?」
さすがに大人の香折さんは、めちゃくちゃなカミングアウト中の俺の固い意思を感じ取り、大きなため息と共に取り乱すことなく淡々と説得を始めた。
「まず、はっきり言わせてもらうわね?
バカじゃないの?
いくら場所と資金があったって簡単に出来ることじゃないことくらいシンくんだって分かるでしょう?
第一大学を辞めるって何?
シンくんのもともとの夢は?
野口教授の講義に感銘を受けて、2年からゼミに参加して私みたいに院まで進んで研究を重ねてからカウンセラーになりたいんじゃなかったの?
お父さんもそれを望んでいたんじゃなかったの?!」
最後の方は必死さを隠せなくなっていた香折さんの言葉を聞きながらぼんやり思った。
あー、俺の夢ってそこまで具体化してたんだっけ?

