「あの、ドラマとか小説とかでたまにありますけど、
『自分自身を守るために辛い記憶全てに蓋をした』
……ってやつなんですかね?」
少々自虐的な発言をする俺に同情するように悲しげな表情を浮かべる医師が
「まー……そういうことだと思います。
このような精神的な問題に断定は禁物ですからはっきりとは申し上げられませんが」
……ですよね。
とは心の中でだけ呟いた。
明確な答えを知っているのは当事者の母だけだ。
何で忘れちゃったの? なんて責めても仕方がないってこと。
「もうすぐ退院許可を出しますが、しばらくはこちらの土地で過ごされることを勧めます。
無理に元のお家に連れて帰っても混乱するだけですからね」
医師の言葉に一緒に話を聞いてくれた叔母夫婦が何度も頷く。
その横で俺は、
『どっちにしても元のお家はないんですよ』
1人心の中で突っ込んでいた。

