悪いことに父は1年前に亡くなっていた祖父の遺産相続で自分の兄弟たちと揉めていた。
俺も父がこんなことになって初めて知ったのだが、祖父が先代から引き継ぎ大切にしていた母屋の土地が火種だったらしい。
そこは、俺たち家族が祖父と共に暮らしていた俺にとっての実家。
大きな公園に面した立地にも恵まれた場所だった。
広い土地に昔ながらの純和風の平屋。
だけど内装はインテリアが趣味だった母が時間をかけて手を入れていた。
結構モダンな雰囲気で植物好きの父が育てた観葉植物がいっぱいあって、庭は祖父と俺がいつも綺麗に手入れをしていた。
家族皆が大好きな空間だった。
祖父が亡くなった直後から、実家を含めた区画にマンション建設の計画が持ち上がったのだそうだ。
立ち退きの条件は破格で、父以外の兄弟は土地を売りたいと言ったが父だけがどうしても首を縦に振らなかった。
父自身も不動産関係の会社を経営していたのだから、土地の価値はよく分かっていたと思う。
マンション建設の意義も。
それでも抵抗を続けていたのは、きっと祖父と母、そして俺も。
家族皆が本当にその場所を愛していたから。
父はどうしてもその場所を守りたかったんだと思う。

