「そんな……」
香折さんの瞳が揺れる。
「あー、そんな顔しないで。お願いだから。
もう3年以上同じ状態が続いてるからさ、すっかり慣れたというか…俺の中でちゃんと折り合いついてるから」
「シンくん!」
ヒラヒラと左手を振りながら軽く言ったのに、香折さんは許してくれなかった。
また赤くなってしまった瞳でじっと俺を見据える。
「…………はい。嘘です。
今でも全然慣れない。
母親が俺に他人行儀に接することとか、
バリバリのキャリアウーマンだったはずの人が畑仕事に精を出してる姿とか…。
そんなの慣れるわけないよね」
観念してカウンターに両肘をつき弱々しく笑う俺の頭を香折さんは優しく撫でてくれた。
「ごめん。私、全然知らなくて……。
苦しんでるシンくんに酷いこと言ったね」
とても苦しそうに小さな声で言った香折さんに向かって俺は首を振る。
「それは本当に違うから。
香折さんは全然悪くない。
何一つ正直に話せなかった俺が悪いんだよ。
あの頃はまだ現実を受け止めきれてなかったけど、それでも話せば良かったんだ。
俺の方こそ、本当にごめん」
一気に言い切って頭を下げた俺を見つめる香折さんの瞳から涙が零れた。

