「ズルいな、あっという間にいつものシンくんに戻っちゃってさ」
香折さんが小さく頬を膨らませ、俺を睨む。
「なんだそれ?」
俺は笑いながらグラスを手にしてカウンターの外側へ出て、香折さんの右隣のスツールに腰を下ろした。
「千波ちゃんの話をしてる時は驚いたり、怒ったり、表情がコロコロ変わって面白かったのに……」
「もしかしてからかってたの?
それ、悪趣味だから」
「からかってたつもりはないわよ。
シンくんが勝手にテンション上げたり下げたりしてたんじゃない」
また楽しそうに笑い出した香折さんの右肩を軽く突き飛ばしてやった。
笑い声が一際大きくなる。
俺も可笑しくなってしまって一緒に笑った。
「……良かったよ。
シンくんが色んな表情をみせられるようになって。
私と付き合ってる時は、いつも飄々としてて自分を晒け出すことなんてなかったでしょう?」
しばらく一緒に笑いあった後、香折さんが俺に向かって首を傾げてみせた。

