「もっと早く、香折さんがこの店に来てすぐに言わなきゃいけなかったのにタイミング逃しちゃった」
おどけたように言ってペロリと舌を出すと、香折さんは吹き出して目尻に滲んだ涙をそっと拭った。
「ありがとう…シンくん。
だからこの色のカクテルなんだね?」
「うん。さすがに分かってくれたみたいだね。
香折さんは、ルビーが一番好きな石だっていつも言ってたよね」
ルビーは7月生まれの香折さんの誕生石。
『ルビーの石言葉って知ってる?
"情熱" と "純愛" なんだよ?
両方とも私の大好きな言葉なんだ。
だからね、私は婚約指輪を貰える時がきたらルビーの指輪が欲しいな。
きっといいお守りになると思うもの』
香折さんのおかげで石言葉っていうものを知った。
色々な石の言葉を調べて、今でもカクテルを作ったあとのうんちくにちょっと利用させてもらったりしている。
もしかしたら、香折さんにルビーの指輪をあげていたのは俺かもしれない。
そうしてあげられなくてごめんという気持ちも込めた。
「本当にありがとう。最高のプレゼントだよ」
俺の想いを分かってくれたらしい香折さんの耳には、昔からずっと身に付けていた小さなルビーのピアスが輝いていた。

