「私もね、久し振りに語劇祭を観に行ってみたの。
可愛かったなぁ、千波ちゃんのジュリエット」
「ジュリ……?」
香折さんの言葉にまたグラスを取り落としそうになった。
「ロミオとジュリエット。
今年のネシ研の演目」
ーーーマレーシア語でロミオとジュリエット?
「ねえ、それって面白いの?」
「もちろん微妙よ? そこのところは。
語劇祭って本当は各国の伝統的なお話とかを上演するんだけどね…。
明らかに冒険だったわね、今年のネシ研は。
斬新だって受けてる人もいたけど、賞はとれなかったんじゃないかな?」
たしか、語劇祭はその場に来てくれた観客や各語学の担当教授などが投票をして最優秀作品賞や各個人賞を決める。
といっても、大した副賞が出るわけでもないので結果に拘ってるサークルなんてないと思うけど。
「ふーん」
頷く俺に向かって香折さんは
「おかわりちょうだい? 同じの」
空になったグラスを差し出した。

