「何……だって?」
バルコニーが……? 落ちてきて…?
それを左手で…?
病院? ケガ?
バルコニーが頭の上に……
「バ、バ、バ、バルコニー?!」
香折さんの話を漸く噛み砕いた俺の絶叫に楽しげな笑い声が重なる。
「そんな取り乱さないでよ。
本物なわけないでしょう? もちろん書割りよ。ベニヤ板の」
「は……?書割り?ベニヤ?」
きょとんとする俺にまだ笑いが止まらない香折さんがグラスをカウンターに置いて、正面から俺を覗き込むようにする。
「当たり前でしょ?
本物のバルコニーだったら千波ちゃんぺちゃんこになっちゃう。
シンくんは語劇祭って覚えてる?
あれで使う書割り。
それなりに大きくて重さもあるベニヤだから危なかったことに変わりはないのよ?
左手首の捻挫だけで済んだのはラッキーだったかも」
語劇祭。
覚えてる。
俺は第二外語が中国語だったけど、中研に入れと随分しつこく勧誘されたし、自分は入らなくても入った友達に頼まれて準備だけ手伝った。
……大道具の書割りね。
「それにしたって、何やってんだよ…」
当たり所悪かったら大惨事じゃないか。

