そうだ、あの日。
春花の葬式の日。
寝不足が続いていた俺を心配して香折さんが車を出して水戸まで乗せていってくれた。
あの日、千波は香折さんに会ってた。
ほんの一瞬くらいだったけど。
『あの日のことは、どんな小さなことでも全部覚えてる』……か。
俺もそう思っていたはずなのにな。
「千波ちゃん、可愛い子だよね」
物思いに耽ってしまった俺を香折さんが呼び戻す。
「え……? ああ、清海にそっくりでしょ?」
作り笑いを浮かべる俺にクスリと笑った香折さんは
「そう言われると似てるかも。
大学で初めて見付けた時はね、頭の上に落ちてきたバルコニーを左手で受け止めようとしてケガしちゃったところで、私が病院に連れていったんだ」
「…………ぶっ…」
口に含んでいた酒を吹き出しそうになった。

