「……ダサすぎる」


ため息をつきつつ、香ばしい落花生をツマミにカクテルを口に含んだ。


ノンアルコールだから酒飲みの俺には物足りない部分があるけれど、爽やかな柑橘系の香りが鼻を抜けて味は悪くない。


但し、糖度はかなり控え目。




『……甘くない』




そう言って小さく鼻にシワを寄せた千波が思い出されて、俺はグラスを弄びながら微笑んだ。


それは、俺が初めて千波に会った日、ミントのタブレットを食べた時に見せたのと同じもので


……俺が一番好きな表情だった。



その表情が見たくてわざと柑橘系で甘くないカクテルを作った。


甘いものに目がない千波が真相を知ったら怒るだろうな。


そんなことを思ったらまた笑えてきて、俺はちびちびとグラスを傾けながら小さく肩を震わせた。





このカクテルにもっとちゃんとした名前を付けてやりたい。


どんな名前がいいだろうか?


そんなことを考えながら、夜はゆっくりと更けていった。