コトン、と清海がカップをカウンターに置く音がやけに響いて聞こえた。
「どこまで…って、香折さんのことは多少話したけど。
お前自身のことは何も言ってねーよ。
それは俺からは話すことじゃねえもん」
「そ。助かったわ、サンキュ」
俺の返事に清海が敏感に反応する。
「そのサンキュ、は千波に知らせないでくれて…って意味?」
「ばーか。んなわけないだろが。
……千波には俺からちゃんと話す」
そう言い切って、自分に言い聞かせるように残りのコーヒーを全部飲み干した。
胃がかっと熱を持ち、直後にぎゅっと痛む。
大事なことは自分からちゃんと話すべきだ。
あいつにはきちんと聞いてほしいし。
でも、それでいいのか?
千波にとっての俺は……。
迷いがそのまま口に出る。
「ーーーでもさ、話していいのかな?
俺は自分の母親1人守りきれなかった情けない男なんだ、なんてさ。
あいつ俺のこと過大評価してくれてるから……」
バシンッ!
最後まで言う前に清海が思い切りカウンターを叩いた。
「あのさー。
俺から話すとか言った直後になんだそれ?
相変わらずグジグジ優柔不断なやつ。
そんなやつに大事な妹やらねえよ?」
清海の言葉が深く刺さって俺は項垂れた。

