えー!!!!
と叫んだ3人は、それ以上の質問を許されることもなく先輩に追い払われて渋々教室へと向かっていった。


私はといえば、突然受けた台風並みの襲撃にまだ驚きが治まらない。


「悪かったな。騒々しくて」


先輩が立ち上がって腰を伸ばしながら言った。


「すごかったですね…。
私が受験生だった頃と全然違います」


私の言葉に先輩はクスリと笑う。


「確かにな?
でも、たまにはあーゆーのがいてもいいだろ?

殆どがお前が思ってるような受験生ばかりだからさ、あーゆー明るさはかなり貴重。

あいつら、中高と同じソフト部なんだってさ。
だからあんなにまとまってるの」


「はぁ……」


何だか分かるような分からないような…。
でも、確かに受験生のイメージを決め付け過ぎるのも良くないだろう。


驚きはしたけど、あの子達はみんな悪い子じゃなかった。


そして、ほんの一瞬だったけど目の前で繰り広げられた先輩と生徒たちのやり取りはとても自然で、それは私が学生時代に求めていたものと近かった。




「さて、俺もそろそろ授業の準備しないと。
あ、その前に日吉を呼んでくるから」


「あのっ」


立ち去ろうとした先輩を追うように私は立ち上がった。


「何? 俺、ホントにそろそろ行かないとなんだけど」


「すみません。
あの、兄は呼ばなくていいです。
他にお願いしたいことができました」


「はぁ?!会ったばかりの俺に?

お前案外ずーずーしいヒト?」



呆れる先輩に怯むことなく、私は頭を下げて一気に言った。



「私に渡辺先輩の授業を見学させてください!!」