「あー!
ガリバーが女の子口説いてるー」


渡辺先輩の失礼な物言いに不貞腐れた私が口を思い切り尖らせたところで、
入り口から賑やかに入ってきた女子3人組が私たちのいる喫煙スペースに走り寄ってきた。


全員紺色ブレザーの制服姿のままだけど、めちゃくちゃ明るい。
笑顔が弾けまくってる。


受験生ってこんなだったっけ?


少なくとも私にとって予備校はこんなに楽しそうに通える場所じゃなかったような…。



「ガリバー、生徒には手を出さないんじゃなかったの?」


「あれ?あなたあんまり見たことのない顔だね?
文系?理系?高校はどこ?」


「ねえねえ、志望校決まってるの?
私とこの子はY大学。あの子は国立志望なんだよー。
全員高望みって言われてんのー」


矢継ぎ早に先輩と私に浴びせられる質問。


何なの?この突き抜けた明るさ。
何なの?このチームワーク。



びっくりしすぎて固まった私を見て、また吹き出した先輩が全部まとめて答えてくれた。



「アホ。そんなんじゃねーよ。
こいつは……菅原、お前がだーい好きな日吉センセの妹。

それで秋山、亀井。お前たちが目指してるY大学の1年生。

つまり、お前たちが欲しいものぜーんぶ持ってるヒト」



答えてくれたのはいいけれど。
そんな言い方をするもんだから。



「「「えーー!!!!」」」



とんでもない大合唱でロビーにいた他の人たちにまで注目されて、私は正真正銘カチコチに固まってしまった。